大使のサイト
新年のご挨拶
デンマークにお住まいの日本の皆様、日本からの旅行者の皆様、日本及びデンマークにご関心のある皆様、新春のお慶びを申し上げます。
日本大使館の仕事は当地にお住まいの日本の皆様や旅行者の皆様の保護・お世話はもちろんのこと、日本国を代表して、デンマークとの友好関係全般を増進させることです。そのため、大使館は皆様に開かれた存在であるべきと考えています。経済・ビジネス関係の促進、人物交流、科学技術の促進により、日本・デンマーク間の相互理解を一層促進したいと思います。また、グローバリゼーションを歓迎するデンマークの政府・国民と共に海外の様々な問題を共に考え、また共に行動しつつ、その協力関係を更に深めて行きたいと思います。
両国間の関係はこれまで当地で活躍された邦人の皆様の弛まぬ努力のおかげもあり極めて良好で、幸い深刻な問題はありません。しかし、私は駐デンマーク日本国大使就任以来、両国関係を更に発展させる為特に以下の二点について注意して参りました。
第一は我が国の抱える諸問題の解決の為に、様々な先進的事例をデンマークから学ぶことです。デンマークは我が国と同様、高齢化社会を迎え、介護・医療等、社会福祉に優れた制度・政策を有しています。他方、これら制度・政策が抱える問題も多くあり、今後我が国として高齢化諸問題等を解決するにあたって学ぶ点が多々あります。
またデンマークは地球温暖化の問題解決に大胆な目標を掲げ、世界の模範になろうとしています。デンマーク経済の規模を考えると単純な比較は出来ませんが、風力等の再生エネルギーを最大限活用し、グリーン成長を通じて成長と雇用を確保していこうとする知恵や政策で学ぶ点が沢山あると思います。また、子供達の自己肯定感を育てるデンマークの教育や、進んだ英語教育も見習う点だと考えます。
さらに公共部門が比較的大きいにも関わらず、効率性・生産性が高く、かつ、家庭生活を重視したワーク・ライフ・バランスのとれた市民生活も今後、我が国が模範とすべき点でしょう。
もちろん人口560万のデンマークと1億3千万弱の日本を単純に比較することは出来ませんが、今後日本が地方分権を進め、地方の制度と自主性を尊重する社会に移行していくとすれば、21世紀のモデルの一つとして、日本が吸収すべき点が多くあると考えます。
第二点として、日本の優れた点、問題点等を広くデンマークの国民に発信し続け、我が国を良く理解して貰うことです。我が国国民のライフスタイルや価値観、言論の自由、民主主義、人権尊重、法の支配、市場経済といった基本的価値を守ってきた先進民主主義国としての日本の生き様と国際社会において平和国家としての責任を果たそうとする日本について、積極的に発信していくべきであると考えます。また、アジアの多様性とダイナミズムについても広く知識を共有したいと思います。特に北東アジアにおける厳しい環境や東アジアのめざましい経済発展、文化の多様性などのダイナミックな現実をデンマークの人々に理解してもらいたいと思います。大使館は日本人会等と協力しつつ毎年春にランゲリーン公園にて「桜祭り」を開催し、武道、音楽、お茶会、和食、ポップカルチャー等幅広い日本文化を紹介しています。また昨年は、能、精進料理、寿司及び日本酒のデモンストレーション、茶会等の行事を通じて、デンマーク人に日本を紹介しました。多くのデンマークの若者達が少しでも日本を知る契機になれば幸いです。
こうした取り組みを通じて、両国民の相互理解を深め、単にお互いに良いイメージを持つ段階から更に深化させる必要があります。特にアジアにおける日本とヨーロッパにおけるデンマークは基本的な価値を共有する国として、それぞれが対アジア、対ヨーロッパ政策を実施していく上での「かけ橋」になり、良き相談相手となり得ると思います。そういう意味では、私は日本とデンマークは夫々アジア、ヨーロッパに於ける「玄関口」であると考え、この考えを広く日・デンマーク企業人、知識人に広めてきました。
今後、両国が抱えるグローバルな課題、すなわち、地球温暖化問題、国際テロ、海賊の取り締まり、自由貿易の促進(FTA)、サイバーテロ、安全保障・軍縮等の分野において、両国が共に緊密な協力を進めていくことが望まれます。
日本大使館はそのような役割を果たす中にあって皆様に開かれた存在として、種々の事業を行って参ります。皆様のご意見、アドバイス等は貴重であり、歓迎致します。引き続き宜しく御願い申し上げます。
新年が皆様にとり、実り多き飛躍の年となりますよう祈念致します。
2013年新年
在デンマーク特命全権大使