最近の日デンマーク関係(戦略的パートナーシップの実践)
令和2年11月30日
前略
東京オリンピック、パラリンピックまで、残り約8ヶ月となりました。今月は、バッハIOC会長が日本を訪問し、菅総理と会談し、また、選手村や施設を視察し、「東京大会を必ず実現し成功させる」と発言しました。

11月 デンマーク・スポーツ協会本部前 筆者と自転車協会会長
ファイザー、モデルナ、アストラゼネカによる新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの開発についても、朗報が続いています。デンマークも日本も、コロナの第2、第3の波を押え込むべく懸命に努力している最中、まだまだ油断はできませんが、何か一筋の光明も見え始めたとの印象をもちます。
デンマークの方々とも良く話しますが、コロナ後の国際社会の経済回復、国際社会全体で遵守する新しいルール作りに向けて、日本もデンマークも伴走者を必要としています。両国は、戦略的パートナーとしてお互いを貴重な友人として認め合っており、地理的には離れていますが、外交政策が目指すところには、共通点が多々あるように思います。
10月の国会所信表明演説にて、菅義偉大総理大臣は,2050年までに脱炭素社会を達成する、デジタル庁を新設する、アジア、そして世界の国際金融センターを目指すことを表明され、日本は,着実に走り始めています。デンマークは2030年までに温室効果ガス排出を70%削減する旨公約しており、官民上げて努力を傾注しています。これまで両国ビジネスの成功モデルの1つとして、MHI(三菱重工)ヴェスタスによる洋上風力発電事業の世界展開があり、今後、両社は新たなパートナーシップの下、アジア太平洋地域での展開を図ると伺っています。
また、デンマークは、デジタル化の先進国であり、特に政府のデジタル化は進んでおり、常に世界の3本指に入っています。今後、更にデジタル化を深めていくための研究、ビジネス、議論も盛んです。その中には、フィンテックを駆使した新たな金融ビジネス、サイバー攻撃に対する万全の防御といった論点も含まれます。
こうした背景の下、11月18日、宇山秀樹外務省欧州局長とイェスパー・ソーエンセン外務省政務外務審議官がビデオ会議を開催し、二国間関係及び国際情勢について意見交換を行いました。現在、両国は、首脳文書「戦略的パートナーシップ」の改訂、行動計画作成を進めています。筆者も、ピーター・タクソー=イェンセン在京大使と共に同席しましたが、今回の協議は、双方の事務レベルの二国間関係担当責任者が、両国関係の現状と展望について率直かつ掘り下げた議論を行う貴重な機会となったと思います。

さて,日頃より、日本とデンマークは、国際社会での法の支配の推進、ルール作りに関しても協力を進めています。
11月、オランダのハーグにある国際司法裁判所(ICJ)裁判官の改選選挙が行われ、岩澤雄司ICJ裁判官が再選されました。国際紛争の平和平和的解決のためにICJが果たす役割が益々増大する中、国際社会における法の支配の推進を担う重要な機関での重責を引き続き果たされます。
また、今月、パリのOECDでは、新しい事務局長を選出するプロセスが開始され、前デンマーク外務次官を務めた、クヌッセンOECD事務局次長が立候補しています。数多くの候補者(筆者注:日本からは立候補せず。3名の次長の内1名が、日本の河野正道氏)が手を挙げる中、これから選挙プロセスが本格化します。国際社会の経済分野のルール作りに重要な役割を果たす国際機関の長の選挙の帰趨が注目されます。
最後に、文化の秋に相応しい、今月の明るいニュースを2つお知らせしながら、筆を置きます。1つめは、長年にわたり日本とデンマークの交流に多大なるご貢献をされてこられた長島要一コペンハーゲン大学名誉教授の外務大臣表彰式が開催され、同じタイミングにて最新の御著書「デンマーク文化読本」(丸善出版)が出版されました。心よりお祝い申上げます。

それでは、寒さが厳しくなる今日この頃でありますが、読者のみなさまのご健勝をお祈り申上げます。
草々
在デンマーク日本大使館
宮川 学
宮川 学
【追記】11月のデンマークの方々との対話
また、国会及び政府関係者とは、クリステンセン国会議長に着任表敬を行った他、11月3日の秋の叙勲で旭日重光章を授章されたホーダー国会議員、リデゴー外交委員長、ヘスターヴェン移民統合省次官、ウィンディン・ビジネス庁長官、外務省幹部(複数)、ハンセン自治政府フェロー諸島コペンハーゲン事務所長等とも意見交換を行い、新型コロナウイルス感染症が続く中、デンマーク在住の日本人の安全と安心について、これまでの協力に謝意を表明の上、引き続きの協力を要請し、今後の両国関係の発展に向け協力して行くことを確認し合いました。