大使からの手紙3月号「十年ひとむかし、そして次の十年」
令和3年3月31日
拝啓
早春の息吹身に染む今日この頃、読者のみなさま、おかわりないでしょうか。デンマークでは夏時間が始まり、一挙に日が長くなった感じがいたします。
今月は北部オーフスの日本人語補習校の卒業式、コペンハーゲン補習校の卒業式が無事行われました。卒業生たちは、この1年間、新型コロナウイルス感染症のために、楽しみにしていた運動会やクリスマス会もできずに大変でしたが、人生の次のステージに向けて、たくましく踏み出しました。10年後には、世界のどこかで、「あの時、君はどうしてた」と語り合いながら、日本、デンマークそして国際社会の未来を築いてくれる若者たちの旅立ちを拍手で祝いたいと思います。
さて、今月は東日本大震災10周年という節目の年となりました。イエッペ・コフォズ・デンマーク外相は、「犠牲となられた方々、東北での震災の影響を受け続けている方々、そして10年前のことに思いを致します。デンマークが東松島の子供たちを支援し、同市の復興にささやかながらお役に立て幸甚です」とのメッセージを発出しました。10年前、フレデリック皇太子殿下は、震災3ヶ月後には、被災地を御訪問され、地元の子供から大人まで励まして下さいました。震災直後には、デンマーク緊急事態管理庁の救助専門家たちが、日本に飛びEUからの支援の調整にあたって頂きました。そして、デンマーク国民、企業、政府、赤十字社等から心温まる励ましや援助を頂きました。今の両国関係が良好かつ友好的である背景には、こうしたデンマーク人からのたゆまない連帯の精神と友情があることは間違いありません。改めて心の底から「ありがとうございます」と申上げます。
3月11日、デンマークは、新型コロナウイルス感染症に伴うロックダウンを開始から1周年を迎えました。デンマークの人々の共同体精神、やると決めたらやり抜く根性、長引く規制措置のために苦労も多い中でもユーモアや文化への尊敬を忘れない姿勢は、特筆に値すると思います。細かいところでは、日本人と異なる点も多々ありますが、大きなところ、お互いによって立つ価値観や人生観においては、日本人と通じるところが大きいように感じます。先日、デンマーク企業を訪問した時、社内にあるコロナ検査場を拝見しました。また、別の企業を訪問した際は、「訪問前に検査を受けてきて下さい」と連絡を頂き、「なるほど。お互いに安心して会うための工夫だな」と、すとんと胸に落ちました。
勿論、こうした制限がなくなるに超したことはありません。例えば、音楽演奏の時に奏者の間に設けなければいけない社会的距離。お互いの音を聞きながら演奏するにあたり、大きなチャレンジであると思います。4月のイースター休暇明けには、3ヶ月ぶりに市内の理髪店などが再開します。筆者の回りにも、ピンチをチャンスに切り換えて長髪でおしゃれにしている人もいれば、自分で髪を切って独自のスタイルを築いている人もいて様々です。その後も、4月を通じて、小規模店舗から始まって、デパートなども段階的に再開の見込です。3月末現在、デンマークでは約580万人の国民の1割以上が、1回目のワクチン接種を終えています。
日本でも緊急事態宣言が解除され、慎重に社会の再開が進んでいます。東京オリンピック、パラリンピック大会に海外の観客に来て頂けなくなったことについては、訪日を予定されていたデンマークの方々からは「残念」との声を聞きますが、一息おいて、「仕方ない。成功を祈る」と付言して頂けることが多いです。特に、オリンピック、パラリンピックに参加するスポーツ関係者からは、「大会が維持されて良かった」、「日本は必ず安心な大会を開催してくれる」と前向な声を聞きます。
日本では、桜前線が日々北上しています。新型コロナウイルス感染症対策は、まだまだ気を抜けない日々でありますが、どうぞ御自愛のほどお祈り申上げます。また来月も紙上でお目にかかれることを楽しみにしています。
追伸
デンマーク社会の再開が少しずつ進む中、今月お会いしたデンマークの方々は、半分はオンライン、半分は対面といった感じでした。テスファイ移民統合相、スヴェンセン緊急事態管理庁少佐他(東日本大震災直後に訪日)、ベドステッドDR(日本のNHKに相当)会長、クリスチャンセンTV2(2大ニュース・ネットワークの1つ)CEO、ニューゴー国内オリンピック・パラリンピック委員会会長、ファワスコウ・カヌー協会会長、ウロム国立血清学研究所長、ヨアンセン「ノボノルディスク」CEO、ダンシャヤ「ルンドベック」CEO、カールセンDRビッグ・バンド芸術部長、アナセンVestas(風力発電大手)CEO、トース・ボーンホルム市長、ウィレスレフ国立博物館長、ソマー・デザイン美術館長、外務省、高等教育研究省幹部、当地外交団関係者等と、両国間の戦略的パートナーシップ、新型コロナウイルス感染症対策、スポーツ文化交流、気候変動、北極圏協力等について意見交換を行った他、「フジフィルム・ダイオシンス・バイオテクノロジー」社工場拡張の鍬入れ式で祝辞を述べさせて頂きました。
早春の息吹身に染む今日この頃、読者のみなさま、おかわりないでしょうか。デンマークでは夏時間が始まり、一挙に日が長くなった感じがいたします。
今月は北部オーフスの日本人語補習校の卒業式、コペンハーゲン補習校の卒業式が無事行われました。卒業生たちは、この1年間、新型コロナウイルス感染症のために、楽しみにしていた運動会やクリスマス会もできずに大変でしたが、人生の次のステージに向けて、たくましく踏み出しました。10年後には、世界のどこかで、「あの時、君はどうしてた」と語り合いながら、日本、デンマークそして国際社会の未来を築いてくれる若者たちの旅立ちを拍手で祝いたいと思います。
さて、今月は東日本大震災10周年という節目の年となりました。イエッペ・コフォズ・デンマーク外相は、「犠牲となられた方々、東北での震災の影響を受け続けている方々、そして10年前のことに思いを致します。デンマークが東松島の子供たちを支援し、同市の復興にささやかながらお役に立て幸甚です」とのメッセージを発出しました。10年前、フレデリック皇太子殿下は、震災3ヶ月後には、被災地を御訪問され、地元の子供から大人まで励まして下さいました。震災直後には、デンマーク緊急事態管理庁の救助専門家たちが、日本に飛びEUからの支援の調整にあたって頂きました。そして、デンマーク国民、企業、政府、赤十字社等から心温まる励ましや援助を頂きました。今の両国関係が良好かつ友好的である背景には、こうしたデンマーク人からのたゆまない連帯の精神と友情があることは間違いありません。改めて心の底から「ありがとうございます」と申上げます。

(令和3年3月11日、日本大使公邸にて、2011年3月に支援のため訪日したデンマーク緊急事態管理庁隊員の方々と共に。油彩画「福島2011」は中原芳樹氏の作品。)
3月11日、デンマークは、新型コロナウイルス感染症に伴うロックダウンを開始から1周年を迎えました。デンマークの人々の共同体精神、やると決めたらやり抜く根性、長引く規制措置のために苦労も多い中でもユーモアや文化への尊敬を忘れない姿勢は、特筆に値すると思います。細かいところでは、日本人と異なる点も多々ありますが、大きなところ、お互いによって立つ価値観や人生観においては、日本人と通じるところが大きいように感じます。先日、デンマーク企業を訪問した時、社内にあるコロナ検査場を拝見しました。また、別の企業を訪問した際は、「訪問前に検査を受けてきて下さい」と連絡を頂き、「なるほど。お互いに安心して会うための工夫だな」と、すとんと胸に落ちました。
勿論、こうした制限がなくなるに超したことはありません。例えば、音楽演奏の時に奏者の間に設けなければいけない社会的距離。お互いの音を聞きながら演奏するにあたり、大きなチャレンジであると思います。4月のイースター休暇明けには、3ヶ月ぶりに市内の理髪店などが再開します。筆者の回りにも、ピンチをチャンスに切り換えて長髪でおしゃれにしている人もいれば、自分で髪を切って独自のスタイルを築いている人もいて様々です。その後も、4月を通じて、小規模店舗から始まって、デパートなども段階的に再開の見込です。3月末現在、デンマークでは約580万人の国民の1割以上が、1回目のワクチン接種を終えています。
日本でも緊急事態宣言が解除され、慎重に社会の再開が進んでいます。東京オリンピック、パラリンピック大会に海外の観客に来て頂けなくなったことについては、訪日を予定されていたデンマークの方々からは「残念」との声を聞きますが、一息おいて、「仕方ない。成功を祈る」と付言して頂けることが多いです。特に、オリンピック、パラリンピックに参加するスポーツ関係者からは、「大会が維持されて良かった」、「日本は必ず安心な大会を開催してくれる」と前向な声を聞きます。
日本では、桜前線が日々北上しています。新型コロナウイルス感染症対策は、まだまだ気を抜けない日々でありますが、どうぞ御自愛のほどお祈り申上げます。また来月も紙上でお目にかかれることを楽しみにしています。

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敬具 |
在デンマーク日本大使館 |
宮川 学 |
追伸
デンマーク社会の再開が少しずつ進む中、今月お会いしたデンマークの方々は、半分はオンライン、半分は対面といった感じでした。テスファイ移民統合相、スヴェンセン緊急事態管理庁少佐他(東日本大震災直後に訪日)、ベドステッドDR(日本のNHKに相当)会長、クリスチャンセンTV2(2大ニュース・ネットワークの1つ)CEO、ニューゴー国内オリンピック・パラリンピック委員会会長、ファワスコウ・カヌー協会会長、ウロム国立血清学研究所長、ヨアンセン「ノボノルディスク」CEO、ダンシャヤ「ルンドベック」CEO、カールセンDRビッグ・バンド芸術部長、アナセンVestas(風力発電大手)CEO、トース・ボーンホルム市長、ウィレスレフ国立博物館長、ソマー・デザイン美術館長、外務省、高等教育研究省幹部、当地外交団関係者等と、両国間の戦略的パートナーシップ、新型コロナウイルス感染症対策、スポーツ文化交流、気候変動、北極圏協力等について意見交換を行った他、「フジフィルム・ダイオシンス・バイオテクノロジー」社工場拡張の鍬入れ式で祝辞を述べさせて頂きました。