マグノリアの咲く季節に(大使からの手紙4月号)
令和3年4月29日

拝啓
コペンハーゲンでは、桜爛漫からマグノリアが咲き始める頃、読者の皆様、いかがお過ごしでしょうか。今月は、当地では、桜祭りが復活し(オンラインながら)、下旬からは市内のレストランや大型店舗も再開し、デンマーク国民の2割強が、任意・無料のワクチン接種を終了し、5月には一部の文化芸術活動の再開も予定されるなど、まだまだ大変な中ながら、少し明るい兆しも見え始めています。
長いロックダウンを経て、気になるのは、経済の行方。4月のIMF経済見通しでは、2021年(括弧内は2020年)は、世界6.0% (▲3.3%)、ユーロ圏4.4%(▲6.6%)、日本3.3%(▲4.8%)、デンマーク2.8%(▲3.3%)、米国6.4%(▲3.5%)といった具合で、不確実性はありながら、それぞれの国で、経済回復が予想されます。世界経済見通し 2021年4月 (imf.org)
とは言え、生活の実感としては、デンマークの官民の様々な方々と話しをしても、政府も企業も多数が在宅勤務を続けておられ、また、建設、製造、家電等、一部、痛手が比較的軽微であったビジネスもありますが、ホテル、観光、飲食、文化関係等、この1年間、相当の打撃を受けた部門もあり、とにかく一日も早く、新型コロナウイルス感染症を乗り越えて、経済活動を正常化させようとの願いは、デンマークも日本も同じです。
先日、日本の報道番組で、コロナ渦中で最も売れているのが、空気清浄機、加湿器等であるとのニュースを見て、その数日前に、天命を全うした清浄機と加湿器を自分も買い替えていたことに、「デンマークにいても、つくづく日本人なんだな」と、思わず納得しながらも苦笑い。最近のデンマークでの売れ筋商品について印象に残るエピソードは、「日本の上履き・スリッパ文化を説明したら、スリッパが良く売れた」との日本の方からお聞きした話や、「デンマーク人のチョコレート等、甘いお菓子の一人当たりの消費量は、世界有数である(ので健康に気をつけるべし)」あたりでしょうか。

そうした中、今月22-23日、米国主催の気候サミットが開催され菅総理、フレデリクセン・デンマーク首相はじめ、世界40か国程から首脳が出席しました。菅総理からは、2030年までに温室効果ガスを46%削減する(これまでの目標の7割以上の引き上げ)ことを目指し、政府として再エネなど脱炭素電源を最大限活用し、企業に投資を促すための十分な刺激策を講じますと発言しました。100180268.pdf (mofa.go.jp)フレデリクセン首相は、「我々にはできる自信がある。なぜなら、気候のためにやるべきことをやらなければならないから」と発言し、デンマーク企業はグリーンな解決策を世界に提供できると発信しました。サミットの目的は、地球温暖化を抑えるための協力を強化すること。そのためにも、グリーン・トランジションをコロナ後の経済回復の起爆剤にできないかとの経済的な議論は重要です。そして、洋上風力発電、水素エネルギーなど、日本とデンマークの間には、具体的な商機があります。
今月は、マグノリア咲く米国オーガスタでのマスターズ・ゴルフ選手権にて、松山英樹選手が優勝との吉報もありました。そして、ロサンジェルスでは、2本のデンマーク映画Another RoundとSound of Metal がオスカー受賞。
ゴールデン・ウィークを迎える日本では、4月25日から5月11日まで、東京、大阪、兵庫、京都に緊急事態宣言が出され、ウイルスの抑え込みを図ります。ワクチン接種も一歩一歩着実に進行中です。デンマークには、約1600名の日本人の方々が住まわれています。我々日本大使館員は、引き続き緊張感をもって、デンマーク、グリーンランド、フェロー諸島にお住まいの日本人の方々へのコロナ関連情報をお伝えし、また、デンマーク政府当局関係者との意思疎通をしっかりと続けて参ります。
では、来月、読者のみなさまと、紙面にてお会いできることを楽しみにしつつ、ご自愛のほどお祈り申し上げます。
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敬具 |
在デンマーク日本大使館 |
宮川 学 |
追伸
今月は、デンマーク社会の再開が段階的に進むにつれ、対面での少人数意見交換も少しずつ戻ってきてます。冒頭に、「検査で陰性でした」とか「ワクチン接種終えました」と挨拶される方も増えてます。ローダム最高裁長官、ローゼ中銀総裁、ホーダー国会議員(元文化相、移民統合相)、フー=ダム国会議員(グリーンランド委員会委員長)、エレマン=キンゴンベ首相府外交担当次官補、セアキャー保健次官、ボツアウ・エネルギー庁長官、クリステンセン外務省気候大使他外務省幹部、ブレダム・ロスキレ市長、スタンスエーアー・フォーボー市長、ヴィンダム・シルケボー市長、フォーネスSAXO銀行CEO、ウェナー・コペンハーゲン大学学長、ビャクレフ・デンマーク工科大学学長、トマセン体操協会会長、ブロヴィル・ボクシング協会会長、ハンセン射撃協会会長、ヘルストラン馬術協会会長などの方々とお会いし、両国交流の強化などについて意見交換し、また、関係当局に対して、在留邦人の安全・安心の確保のための協力に謝意を表明し、引き続きの協力を要請しました。そして、コペンハーゲン桜祭りなどの機会に、オンラインで挨拶する機会を頂きました。お忙しい中、ありがとうございました。