大使レター2月号 「絆 窓開く日を待つ春」
拝啓、
寒さの中にも春の足音が聞こえてくる今日この頃、読者のみなさま、如何お過ごしでしょうか。デンマークは今月から新型コロナウイルス感染症関連の規制が、ほぼ全面的に解除となり、春を待つ町に活気があふれてきています。有難いことに、対面の会合や行事も随分増えてきた感じがあり、日本とデンマークの絆を深く感じる機会が続いています。
今月23日は、天皇陛下の62歳の御誕生日でしたが、多くのデンマーク国民及びデンマーク在住の日本の方々より、祝意の表明をいただきました。皇室と王室の御交流によって、あたかも池に投じられた石が幾重にも波紋を広げてゆくかのごとく、長きにわたり続く、両国間の友情の暖かさ、深さに接することが、折々にあります。今月、王室ヨット「ダーネブロ」90周年の機会に、海洋博物館を訪問した際には、2017年の皇太子殿下(当時)の同博物館御視察時の案内役を務めた館長及び理事長が、4年余り前の思い出をあたかも昨日のことのように、満面の笑みで語られたのも一例です。
そして海と言えば、2月10日は、故ヨハネス・クヌッセン機関士の65周忌。和歌山県沖にて、厳寒の海に身を投じて日本人漁師の救出を試みたクヌッセン氏の遺徳を偲び、故人の故郷、フレデリクスハウン市のビヤギッド・ハンセン市長とオンラインで共にご冥福をお祈り申し上げ、市長からは、地元の高校生たちが墓前で献花する姿をご報告いただきました。デンマークの若者たちが、クヌッセン氏の志を受け継いで、両国の絆を未来に向けて紡いでいます。
こうして今月を振り返りながら、この手紙を書いている間も、ウクライナの状況が、大変案じられます。デンマークも日本も、ロシアによる軍事侵攻に強い遺憾の意を示し、何とか止めることができないか、外交努力を含め、あらゆる努力を注いでいます。昨2月25日、筆者は、当地ドイツ大使館において、G7各国の大使と共に、ウクライナ大使とお会いし、連帯を再確認しました。同日夕刻のコペンハーゲン交響楽団の上岡敏之首席指揮者の演奏会では、冒頭、ウクライナ国歌が演奏され、全員で平和を祈ったと聞きました。危機にあたって、同じ思いで団結し行動する。ここにも日本とデンマークの絆を強く感じます。
「世界との往き来難かる世はつづき窓開く日を偏に願ふ」
1月18日の歌会始での天皇陛下の御製です。コロナ禍が収束したその先に、日本とデンマークとの人々の往来が再び盛んになる日を願うお気持ちを歌に詠まれたとお聞きします。3月1日から、日本の水際措置の緩和が一歩進みます。デンマークから日本へのビジネス、留学目的の渡航は、到着後3日目の検査が陰性であれば、これまでの7日間の待機が3日間に短縮されます。空港から自宅や宿泊先への移動には公共交通機関の利用も可能となります。
筆者は、当地在住の日本人の方々、デンマーク人のビジネス関係者、日本留学予定者や、元留学生、更には留学予定の御子息をもつご両親から、早く日本に出張したい、勉強したい(したかった)とのお話を伺ってきました。春の足音とともに、一歩一歩、そうした思いが実現し、両国の絆がさらに深まるいことをお祈りします。そして、引き続き丁寧にみなさまの声をお聞きしながら、大使館員一同、微力ながらお手伝いを続けて参りたく、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
敬具
在デンマーク日本大使館 |
宮川 学 拝 |
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追伸:
今月は、プレーン食料・農業・漁業大臣、ホメルゴー雇用大臣、クリステンセン王宮府長官、ディトマー産業・ビジネス・金融省次官、フレル=ペターセン気候・エネルギー・供給省次官、チューゲセン国際就職統合庁長官、ヨアンセン・フェロー諸島国会議員、ホーダー国会議員、ハンセン・フレデリクスハウン市長(クヌッセン機関長の殉難65周忌)、ホルム翻訳家、ベドステッド・デンマーク公共放送(DR)会長、ロン同局長、ヨアンセン・フェロー諸島国会議員、ニッパー・オーステッド(大手エネルギー企業)CEO、ソアンセン産業連盟CEO、フォールATP(年金ファンド)CEO、ルンドキスト輸出金融基金CEO、インゲルス建築家、日本へのデンマーク人留学生、柔道関係者、外務省のシルマ=ヨンス安全保障代表、ウレラップ儀典長等の幹部、当地のウクライナ大使等外交団等とお会いし、日デンマーク関係、ウクライナ情勢はじめ国際情勢について意見交換の機会がありました。また、マルグレーテ二世女王陛下が御参列された海洋博物館における王室ヨット「ダーネブロ」号建造90周年式典、ヴァメン財務相による外交団ブリーフに出席しました。