大使レター9月号 「デンマーク王国での3年間」
拝啓、
読者のみなさま、いかがお過ごしでしょうか。2019年10月に当地に着任してから、間もなく3年。いろいろなことがありましたが、10月中旬に当地での任務を終了することとなりました。日本とデンマークの間には、9つの姉妹・提携都市があります。当地の地図の北から、フェロー諸島クラクスビーク市と和歌山県太地町、フレデリクスハウン市と和歌山県日高町、シルケボー市と福岡県嘉麻市、グラズサックセ市と東京都台東区、コリング市と愛知県安城市、ソロー市と宮城県涌谷町、オーデンセ市と千葉県船橋市、ネストベズ市と千葉県成田市、フォーボー・ミッドフュン市と北海道登別市。これまで、デンマークの9つの市を訪問し、また、時にはコペンハーゲンで、これらの市の関係者をお迎えする機会がありました。そうした往来を繰り返す中で、各地の豊かな歴史と文化について教えて頂いたことに、とても感謝しております。新型コロナウイルス感染症が厳しかった時期には、早くコロナが収まって、相互交流を再開したいとお互いに励まし合い、また、若者交流、文化スポーツ交流や貿易投資の一層の拡大に向けた展望などについて意見交換し、時には、デンマークの「ヒュッゲ」(注:満足し、居心地がよく陽気な気分)や「フォルケ・ホイスコーレ」(注:誰でも学ことができ、生徒の自主性を重んじる国民高等学校)の日本への紹介について、具体的な活動について説明頂いたりすることもありました。この夏、嘉麻市の方々がシルケボーを訪問され、また、10月初旬には安城市の方々がコリングを訪れる予定です。また、姉妹都市を含め、全国的に、留学生や若者交流も少しずつ再開しているとうかがいます。こうした相互交流が再開して、本当に良かったと思いますし、これからも長い年月にわたり、交流が深まることを祈っております。

(2021年9月 コペンハーゲン ROYAL RUN)

(公邸会食時の生け花)
今年の春、3年ぶりにコペンハーゲン桜祭りが開催され、大勢の方々が参加されました。そこでの熱気とともに、3年間、デンマークで体験した日本人アーティストによる音楽、絵画、インストレーション、映画、武道、茶道、書道、いけばな、デザイン、日本刀のつばなど、数多くのシーンを想い起こします。おおげさかもしれませんが、我々は文化によって生かされているのではないかと、一人合点してしまいます。両国文化交流に携わる日本とデンマークの尊敬すべき方々に、心より、「コロナの時期を含め、我々の心を豊かにして頂きありがとうございます。これからも日本とデンマークのために、よろしくお願いします」と申し上げます。
さて、この3年間、両国政府間の関係強化も、一歩一歩進展し続けています。昨年11月、コフォズ外相が日本を訪問し、林外務大臣と会談し、戦略的パートナーシップを一層深めて行くことにつき認識が一致しました。ロシアによるウクライナ侵略への対応、自由で開かれたインド太平洋、気候・エネルギー、ライフサイエンス、デジタル化など、現在の国際情勢において、同志国として一層協力を強化しつつあります。両国防衛大臣を含む防衛当局間でも、電話会談、訪問、国際会議への出席が行われるなど、対話が着実に進展中です。折々に、デンマークの関係者とこうした流れを更に強めていく方途について話合っています。
そして、二国間関係を経済面から力強く進めているのが、両国企業の方々です。日本は、欧州諸国以外では、米国に次いで2番目の対デンマーク投資国です。新型コロナウイルス感染症の大変な時期にあっても、デンマークへの増資を決断された日本企業、長年の投資を新しい視点から更新し続ける日本企業、逆に、風力発電、製薬、農業、デジタル、金融など対日投資の拡大を目指すデンマーク企業の方々とお話するたびに勇気づけられます。また、日本大使館と共に、2020年グリーンランド、2022年フェロー諸島をそれぞれ訪問し、ビジネス対話を行った日本企業の皆様と日本代表団を受け入れたグリーランド、フェロー諸島官民関係者に、深く御礼申し上げます。

(2022年9月 フェロー諸島の風景)
両国間の長い歴史の中で、いつの日かこの3年間を振り返れば、新型コロナウイルス感染症によって両国が影響を受けた時期となるかもしれません。日々の大使館業務の中で、館員一同、デンマーク、グリーンランド、フェロー諸島にお住まいの日本人の方々の安全と安心の確保を最優先に努力を重ねております。水際措置の緩和も段階的に進む中、引き続き、お気づきの点をご指摘頂ければ幸いです。また、デンマーク当局の方々には、ワクチン接種、検査を含め日頃からの協力に感謝申し上げます。
物理的な制限がきつい時期においてこそ、内面的な意思疎通を図ろうという意思は、お互いに強いように思います。そして、10年後に、この時期を経験したデンマーク人と日本人が語り合えば、共通の思い出、お酒、シュナップスも尽きることなく夜が明けるのではないかと、ほろ酔い加減の夢を見ながら、また、どこかで読者の皆様とお会いできる機会を待ちたいと思います。長い間、おつき合い頂きまして、大変ありがとうございました。皆様の御健勝をお祈り申し上げます。
敬具 |
在デンマーク日本大使館 |
宮川 学 拝 |
(2020年1月 マルグレーテ二世女王陛下主催外交団新年レセプション前)
追伸
今月、エリザベス二世英国女王陛下が御逝去され、コペンハーゲン市内の聖オーバン教会での追悼式典に参列し、また、当地英国大使館に弔問記帳に訪れました。
また、クリステンセン国会議長、ロアダム最高裁判所長官、メルキオール元最高裁判所長、コフォズ外務大臣、リデゴー国会外交政策委員長(元外相)、ベック国防次官、フレーレ=ペータソン気候エネルギー供給次官、レガート法務次官、ハンセン国家警察長官代行、シルマ=ヨンス供給安全保障庁長官、ソーアンセン特許商標庁長官、アナス・フォー・ラスムセン元首相、イェンセン・ヒレロッド市長、ラスムセン・ヴァレンスベック市長、バーフォー・コペンハーゲン技術環境担当市長、ウェナー・コペンハーゲン大学長、ニールセン・オーフス大学長、イエンセン同大学生命医学部長、クラブ=ヨハンセン・ベアリンスケ紙CEO、リデゴー歴史家、ラデゴー・デンマーク映画協会会長、カールセン及びエンゲルDRビッグ・バンド芸術監督、ヨアンセン「ノヴォ・ノルディスク(製薬)」CEO、スコウ「マースク(海運)」CEO、キム・サクソ銀行CEO、ミケルセン・デンマーク商工会議所会頭、ニッパー「オーステッド(電力)」社CEO、アナセン「ヴェスタス(風力発電)」CEO、ゼベルグ・デンマーク産業連盟デジタル局長、ウレラップ・アジア協会会長、レヘトマキ北欧理事会事務総長、クルーガWHO欧州事務所長、ヨハンセン名誉総領事、外務省のミケルセン次官、シルマ=ヨンス安全保障特別代表、ソーアンセン政務外務審議官、グロンベック=イエンセン欧州担当外務審議官、ファインベルグ儀典長、ヴィンクラー北極担当大使、タンゲ海洋安全保障特別代表、クリステンセン気候担当大使等の幹部等とお会いし、当地在住の日本人の安全と安心の確保、二国間関係の発展、国際情勢等について意見交換しました。
また、コペンハーゲン桜フェスティバルの実行委員会等の関係者と懇談の機会を頂き、富士フイルム・デンマーク鍬入れ式、「ウィンドロジー(窓学)」展示会の開会式、武田伊佐様の能ワークショップに招待頂きまして、ありがとうございました。当館主催の瀬戸ウェビナーでは、樽田裕史氏による発表を頂きありがとうございました。