シロクマと羊―2つの自治領

2020/3/10


 
       
2月に、厳冬のグリーンランド、3月に、嵐のフェロー諸島と、デンマーク王国の2つの自治領に、着任挨拶に行って参りました。

デンマーク憲法によれば、デンマーク政府は、原則として、デンマーク王国の全領域における外交及び安全保障上の利益につき責任をもつと定められています。2つの自治政府は、経済及び文化等の他の分野に関する自治を享受します。  

1 グリーンランドと日本企業
2月10日、コペンハーゲンから飛行機で4時間余り、グリーンランドに到着。3泊4日の日程で、キールセン首相はじめ外相、財務・天然資源相、産業相等の自治政府関係者、水産、航空、海運関連企業の方々とお会いしました。今回の訪問には、大使館の小林功人書記官の尽力で、三井物産、三菱商事、日本気象とJETROの代表の方々に御参加頂き、日本の企業が来るということで、グリーンランドに、心から歓迎して頂きました。
 

(首都ヌークの街並み)

日本の寿司屋でおなじみの甘エビ、エンガワの相当部分は、グリーンランド産です。知る人ぞ知ることかもしれませんが、年間約80億円の海産物が日本に輸出されています。また、日本とグリーンランドは、北極圏で共同研究の実績を長年積んでいます。昨年夏、「北の果ての小さな村で(Une annee polaire)」(サミュエル・コラルデ監督)というグリーンランドを舞台にした素晴らしい映画が日本で上映されたのをご覧になった方もいるかもしれません。住民のほとんどは、カラーリットと呼ばれる一見、日本人やアジア系の国民に良く似た方々です。

広大な国土は、日本の6倍、南北の距離は沖縄から北海道に相当します。昨年夏、トランプ米大統領が「グリーンランドを買いたい」と発言したのに対して、グリーンランド自治政府は、「売り物ではないが、ビジネスは歓迎する」と応じました。地球温暖化で氷が溶け、鉱山やレアアースの開発や新しい北方航路の商業化に向けた動きが注目される中、同行頂いた日本企業の方々も、興味深い初期的なやりとりをして頂いたと思います。

 


(キールセン首相(左から3番目)を囲んで。日本代表団)


2 フェロー諸島と日本映画
2月28日、コペンハーゲンから2時間の直行便で、首都トースウハウンに到着し、週末をはさみ3泊4日滞在しました。2014年から6回目になる日本映画祭を週末に開催し、前後にニールセン首相、ラナ外務・文化相はじめとする自治政府、オルセン・トースハウン市長及び教育関係者にお会いしました。

 
     


週末の映画には、地元の方も驚くほどの嵐にも関わらず、子供から映画、武道、ハンドボール、メディア関係の大人まで、幅広いお客様に来場頂き、楽しんで頂くことができました。

 


当日急遽、グドムンド・ヘルムスダル監督の快諾を得て、同監督作フェロー短編映画「兄弟トロール」も特別上映され、来年からは、双方向の日フェロー映画上映が可能になりそうです。
 


(2月29日、強風の首都トースハウンの港。)

また、1月に訪日したグラシア高校・大学の先生と生徒にお会いする機会にも恵まれ、大勢で行った新宿のラーメン屋で「おひとりさま」席に通された体験など、新鮮な印象を伺うこともできました。



(2月28日、ハンセン外務次官(左から3番目)主催ワーキング・ディナー) 

 
 
3 シロクマと羊
グリーンランド自治政府職員の名刺にはシロクマ、フェロー諸島自治政府職員の名刺には羊が印刷されてます(冒頭の写真は交換した名刺の抜粋です)。そして、コペンハーゲン市役所の屋根からは、シロクマと羊の彫像が街を見下ろしています。長い歴史を経て、今の関係を築いてきたデンマーク王国。日本は、今後ともデンマーク、グリーンランド、フェロー諸島との友好関係を一歩一歩深めて行けるよう、今回の訪問で頂いた温かな友情を大切に深めて参りたいと思います。

それでは、長文になり失礼致しました。今年の日本は、例年より早い桜前線の北上が始まる由。コペンハーゲンでは、スノードロップ(デンマーク語vintergaek)からクロッカス、水仙にバトンが渡され、桜の小さな蕾がふくらむ毎日です。今回はこの辺にて失礼します。