日本とデンマークの地方交流
令和2年8月26日
1 地方交流の全体像
「我が国とオーデンセ市との関係は,今から33年前,1984年に遡ります。当時のダルスコー市長が千葉県船橋市を訪れたことがきっかけとなり,1989年,オーデンセ市と船橋市は姉妹都市提携に調印しました。」2017年6月、日デンマーク修好150周年の機会に、デンマーク王国オーデンセ市にお立ち寄りになられた皇太子殿下のお言葉です。
日本とデンマークには、船橋とオーデンセを含め9組の姉妹都市等の関係がある都市があり、加えて、東京オリンピック、パラリンピックの「ホスト・タウン」として日本の9市町村が登録されています(末尾一覧参照)。お互いを知り合ったきっかけは様々ですが、どの都市も深い友情の絆で結ばれています。もちろん、この5ヶ月は、新型コロナウイルス感染症のために、相互に往来することは難しかったわけですが、逆に、将来に向けて、色々と計画を立てたり、お互いのHPを整備してリンクしようとの試みがあったり、こうした時期ならではの交流を模索する動きもあるようです。
8月に、上記9組の都市の内、2003年から宮城県涌谷町と友好都市関係にあるソロー市、2019年に福岡県嘉麻市とアウトドアツーリズム及び観光友好交流促進基本合意を署名したシルケボー市を訪ねました。幸いなことに、デンマークが新型コロナウイルス感染症対策を効果的に進めているため、社会的距離を保つ、握手はしない、一部の室内施設ではマスク着用等の衛生基準を遵守しながら、国内を比較的自由に動くことができました。
2 宮城県涌谷町とソロー市

(ソロー旧市庁舎 写真:日本大使館) (ソロー・アカデミー前でヨアンセン市長と 写真:ソロー市)
「ようこそソロー市へ」と旧市庁舎前に出迎えてくださったのは、ゲアト・オンストロップ・ヨアンセン市長。8月10日、学校の夏休みが終わり、新学期のスタートの日で、お忙しかったと思いますが、福祉交流がきっかけで始まった涌谷町との友好都市交流や、新型コロナウイルス感染症対策について、いろいろと意見交換させていただきました。
その後、12世紀にアブサロン司教(後にコペンハーゲン市も創設)が創設したソロー市の歴史について説明いただきながら、同じ頃に創立されたソロー・アカデミー(日本の高校に相当)の広大な敷地を歩きながら見せていただきました。
涌谷町は、日本で初めて黄金が産出され、749年聖武天皇の時代に、東大寺大仏に黄金が献上された歴史ある町であること、2017年、涌谷町長、町議会議長(現町長)、医療福祉センター長がソロー市を来訪されたことなどの話をしながら、あっという間の数時間でしたが、再会を約して、訪問を終了しました。
新型コロナウイルス感染症は、福祉行政にも様々な影響を与えていると思われ、高齢者の方々とのリモート画像を通じた意思疎通が行われる一方、お一人お一人の気持ちを良く考えて、そうした道具の使い方も工夫して行く必要があるのではないかなど、ヨアンセン市長との対話を通じて、学ぶところも多かったと思います。事前にアドバイスを頂いた「城山の金」さん(https://www.facebook.com/town.wakuya.miyagi)はじめ、涌谷町関係者のみなさまにも感謝申し上げます。
3 福岡県嘉麻市とシルケボー市
「当日は、アウトドア体験をしてもらいますので、運動しやすい格好で来てください」とのご案内を頂いたのは、2019年に福岡県嘉麻市とアウトドアツーリズムの交流を進めることで合意したシルケボー市です。8月13日、コペンハーゲンから車で3時間余り、市庁舎が改修中との事情もあってか、両市の交流をとりもったアウトドアスポーツ用品の老舗「ノルディスク」社本社ビルにて、スティーン・ヴィンダム市長とお会いし、今後の両市の関係発展に向けた抱負をお聞きし、2018年に策定した「スポーツと福祉に関する新戦略」とその戦略に基づいたマスタープランについて、丁寧な説明を頂きました(事前に、最新の交流状況について教えて頂いた嘉麻市関係者に、シルケボー市の説明概要などお伝えさせて頂きました)。
その後、上着を脱ぎ、Tシャツと短パンに着替えるべしとの指示に従い、人生初めてのカヤック(カヌーです)の試運転も経験させて頂き、船を下りたところで、東京オリンピック、パラリンピックを目指して頑張っておられるクラブセン男子オリンピック候補カヌー選手及びニールセン女子パラリンピック候補卓球選手と対話の機会を頂きました。新型コロナウイルス感染症にもかかわらず、若いお二人が、ひたむきに準備をする姿に、こちらの背筋が伸びる思いでした。
その後、市内の「ヨーン美術館(注:20世紀アヴァンギャルド絵画COBRA運動の主要メンバーであったデンマーク人画家)」(https://www.museumjorn.dk/da/samlinger/om-asger-jorn/)にて、ヤコブ・テー館長、市長、ノルディスク社長と軽いランチを頂きながら、館長から、川と森に囲まれた立地を活かして、子供達に自然と芸術について体験学習するプログラムを実施している同館の活動について伺い、マスクを着用して駆け足で館内を見学させて頂きました。

(1950年代のアスガー・ヨーン 「ヨーン美術館100人のアーティスト」より)
企業と連携しながら、先ずは、アウトドアツーリズムに特化した交流を進めて行こうとの両市の取組に、創意工夫の精神を深く感じる1日となりました。
4 未来に向けて
実は、ピーター・タクソー=イェンセン在京デンマーク大使も、日本において、精力的に地方交流に参加されています。この夏は、例えば、自ら車を運転して、秋田県大潟村を訪問し交流を深めました。そして、今後も新型コロナウイルス感染症との関係で、一層自由な国内移動が可能になることを確認しながら、他の都市を訪問することを考えているとうかがっています。
(7月7日、秋田県大潟村長とタクソーイエンセン大使 写真:駐日デンマーク大使館FB)
国と国との関係は、人と人との関係から。昔から言い伝えられた金言ですが、デンマークに来て、日々、新たな出会いを経験するたびに、そして、特に、地方交流に携わっている方々とふれ合う機会を頂くたびに、言い古されたこの言葉の意味をかみしめる日々です。秋以降も、新型コロナウイルス感染症に注意しながら、デンマーク各地と日本の地方との交流のお手伝いの機会を模索していければ幸いです。
大変な日々は、まだ続きます。みなさまのご無事とご健康をお祈りしつつ、また来月、お話しさせて頂くことを楽しみにしております。
【参考】姉妹都市などの関係を結んだ都市(以下、関係を結んだ時期の順序)。
1989- 千葉県船橋市 オーデンセ市(姉妹都市)
1997- 愛知県安城市 コリング市(姉妹都市)
2000- 東京都台東区 グラズサックセ市(姉妹都市)
2003- 宮城県涌谷町 ソロー市(友好都市)
2003- 千葉県成田市 ネストベズ市(友好都市)
2007- 北海道登別市 フォボー・ミッドフュン市(友好都市)
2011- 和歌山県日高町 フレデリクスハウン市(交換留学生交流)
2018- 和歌山県太地町 フェロー諸島クラクスビーク市(姉妹都市)
2019- 福岡県嘉麻市 シルケボー市(アウトドアツーリズム及び観光友好交流促進に関する基本合意)
以上に加えて、東京オリンピック、パラリンピックの「ホスト・タウン」として、以下の9市町村が登録されています。
香川県坂出市・丸亀市
滋賀県大津市
秋田県大潟村
北海道登別市
長野県長野市
宮城県東松山市
福島県二本松市
東京都練馬区
「我が国とオーデンセ市との関係は,今から33年前,1984年に遡ります。当時のダルスコー市長が千葉県船橋市を訪れたことがきっかけとなり,1989年,オーデンセ市と船橋市は姉妹都市提携に調印しました。」2017年6月、日デンマーク修好150周年の機会に、デンマーク王国オーデンセ市にお立ち寄りになられた皇太子殿下のお言葉です。
日本とデンマークには、船橋とオーデンセを含め9組の姉妹都市等の関係がある都市があり、加えて、東京オリンピック、パラリンピックの「ホスト・タウン」として日本の9市町村が登録されています(末尾一覧参照)。お互いを知り合ったきっかけは様々ですが、どの都市も深い友情の絆で結ばれています。もちろん、この5ヶ月は、新型コロナウイルス感染症のために、相互に往来することは難しかったわけですが、逆に、将来に向けて、色々と計画を立てたり、お互いのHPを整備してリンクしようとの試みがあったり、こうした時期ならではの交流を模索する動きもあるようです。
8月に、上記9組の都市の内、2003年から宮城県涌谷町と友好都市関係にあるソロー市、2019年に福岡県嘉麻市とアウトドアツーリズム及び観光友好交流促進基本合意を署名したシルケボー市を訪ねました。幸いなことに、デンマークが新型コロナウイルス感染症対策を効果的に進めているため、社会的距離を保つ、握手はしない、一部の室内施設ではマスク着用等の衛生基準を遵守しながら、国内を比較的自由に動くことができました。
2 宮城県涌谷町とソロー市


(ソロー旧市庁舎 写真:日本大使館) (ソロー・アカデミー前でヨアンセン市長と 写真:ソロー市)
「ようこそソロー市へ」と旧市庁舎前に出迎えてくださったのは、ゲアト・オンストロップ・ヨアンセン市長。8月10日、学校の夏休みが終わり、新学期のスタートの日で、お忙しかったと思いますが、福祉交流がきっかけで始まった涌谷町との友好都市交流や、新型コロナウイルス感染症対策について、いろいろと意見交換させていただきました。
その後、12世紀にアブサロン司教(後にコペンハーゲン市も創設)が創設したソロー市の歴史について説明いただきながら、同じ頃に創立されたソロー・アカデミー(日本の高校に相当)の広大な敷地を歩きながら見せていただきました。


(ソロー・アカデミー 写真:ソロー市)(ソロー修道院教会 写真:日本大使館)
涌谷町は、日本で初めて黄金が産出され、749年聖武天皇の時代に、東大寺大仏に黄金が献上された歴史ある町であること、2017年、涌谷町長、町議会議長(現町長)、医療福祉センター長がソロー市を来訪されたことなどの話をしながら、あっという間の数時間でしたが、再会を約して、訪問を終了しました。


(涌谷町黄金山神社 写真:涌谷町HP) (写真:涌谷町HP)
新型コロナウイルス感染症は、福祉行政にも様々な影響を与えていると思われ、高齢者の方々とのリモート画像を通じた意思疎通が行われる一方、お一人お一人の気持ちを良く考えて、そうした道具の使い方も工夫して行く必要があるのではないかなど、ヨアンセン市長との対話を通じて、学ぶところも多かったと思います。事前にアドバイスを頂いた「城山の金」さん(https://www.facebook.com/town.wakuya.miyagi)はじめ、涌谷町関係者のみなさまにも感謝申し上げます。
3 福岡県嘉麻市とシルケボー市

(2019年 シルケボー市にて赤間嘉麻市長、ヴィンダム市長、基本合意に署名)
「当日は、アウトドア体験をしてもらいますので、運動しやすい格好で来てください」とのご案内を頂いたのは、2019年に福岡県嘉麻市とアウトドアツーリズムの交流を進めることで合意したシルケボー市です。8月13日、コペンハーゲンから車で3時間余り、市庁舎が改修中との事情もあってか、両市の交流をとりもったアウトドアスポーツ用品の老舗「ノルディスク」社本社ビルにて、スティーン・ヴィンダム市長とお会いし、今後の両市の関係発展に向けた抱負をお聞きし、2018年に策定した「スポーツと福祉に関する新戦略」とその戦略に基づいたマスタープランについて、丁寧な説明を頂きました(事前に、最新の交流状況について教えて頂いた嘉麻市関係者に、シルケボー市の説明概要などお伝えさせて頂きました)。


(ヴィンダム市長と 写真:シルケボー市HP) (エリック・ムラー「ノルディスク」社長と)
その後、上着を脱ぎ、Tシャツと短パンに着替えるべしとの指示に従い、人生初めてのカヤック(カヌーです)の試運転も経験させて頂き、船を下りたところで、東京オリンピック、パラリンピックを目指して頑張っておられるクラブセン男子オリンピック候補カヌー選手及びニールセン女子パラリンピック候補卓球選手と対話の機会を頂きました。新型コロナウイルス感染症にもかかわらず、若いお二人が、ひたむきに準備をする姿に、こちらの背筋が伸びる思いでした。

(シルケボー市のオリンピック、パラリンピック候補選手及び強化チームの方々と)
その後、市内の「ヨーン美術館(注:20世紀アヴァンギャルド絵画COBRA運動の主要メンバーであったデンマーク人画家)」(https://www.museumjorn.dk/da/samlinger/om-asger-jorn/)にて、ヤコブ・テー館長、市長、ノルディスク社長と軽いランチを頂きながら、館長から、川と森に囲まれた立地を活かして、子供達に自然と芸術について体験学習するプログラムを実施している同館の活動について伺い、マスクを着用して駆け足で館内を見学させて頂きました。

(1950年代のアスガー・ヨーン 「ヨーン美術館100人のアーティスト」より)
企業と連携しながら、先ずは、アウトドアツーリズムに特化した交流を進めて行こうとの両市の取組に、創意工夫の精神を深く感じる1日となりました。
4 未来に向けて
実は、ピーター・タクソー=イェンセン在京デンマーク大使も、日本において、精力的に地方交流に参加されています。この夏は、例えば、自ら車を運転して、秋田県大潟村を訪問し交流を深めました。そして、今後も新型コロナウイルス感染症との関係で、一層自由な国内移動が可能になることを確認しながら、他の都市を訪問することを考えているとうかがっています。

(7月7日、秋田県大潟村長とタクソーイエンセン大使 写真:駐日デンマーク大使館FB)
大変な日々は、まだ続きます。みなさまのご無事とご健康をお祈りしつつ、また来月、お話しさせて頂くことを楽しみにしております。
在デンマーク日本大使館
宮川 学
宮川 学
1989- 千葉県船橋市 オーデンセ市(姉妹都市)
1997- 愛知県安城市 コリング市(姉妹都市)
2000- 東京都台東区 グラズサックセ市(姉妹都市)
2003- 宮城県涌谷町 ソロー市(友好都市)
2003- 千葉県成田市 ネストベズ市(友好都市)
2007- 北海道登別市 フォボー・ミッドフュン市(友好都市)
2011- 和歌山県日高町 フレデリクスハウン市(交換留学生交流)
2018- 和歌山県太地町 フェロー諸島クラクスビーク市(姉妹都市)
2019- 福岡県嘉麻市 シルケボー市(アウトドアツーリズム及び観光友好交流促進に関する基本合意)
以上に加えて、東京オリンピック、パラリンピックの「ホスト・タウン」として、以下の9市町村が登録されています。
香川県坂出市・丸亀市
滋賀県大津市
秋田県大潟村
北海道登別市
長野県長野市
宮城県東松山市
福島県二本松市
東京都練馬区