ウィズ・コロナと社会の再開

令和2年9月29日


1  はじめにー文化の再開

 「劇場には、これ以上の規制はありません。この点は、良い知らせですね。」国会事務所を訪問した私に、さらりとおっしゃったのは、ベアテル・ホーダー国会議員(元文化相等を歴任)。9月18日、その日に行われたフレデリクセン首相による新型コロナウイルス感染症対策の規制拡大の発表(注)に、改めて気を引き締めながら、正直、少しうつむいてしまう気持ちの中で、励まされる言葉でした。
(注)9月18日フレデリクセン首相発表の概要:https://www.facebook.com/japanindenmark/posts/1138425799926107


 春から夏にかけて、多くの劇場が閉鎖を余儀なくされ、7月にほんの少し、そして9月になり、さらに少しずつ、人数制限、消毒液の配置などの衛生上の措置を講じながら、デンマークの文化活動が活気を取り戻しつつあると感じます。

2  デザインによるウィズ・コロナへの挑戦

 9月1日、市内のBLOXデザイン・センターにおいて、「デザインがウィズ・コロナの世界をどう改善できるか」とのテーマで活発な議論が行われました。冒頭にはメアリー皇太子妃殿下も御臨席されました。1つヒントを頂いたのは、ヴァーチャルとリアルの上手な組み合わせ。ヴァーチャルの利点は、世界を瞬時に繋ぎ、移動時間が削減できることであり、その限界は、本音の交流にならない、一体感がでないといった点にあるかと思います。


 このセミナーでは、最初に、警察代表が舞台に上がり、衛生上の注意を述べた後、救急隊員、シニアー市民、医者、スポーツ選手、女子高生が舞台で一言ずつ思いの丈を語り、その後、米国の都市デザイン専門家がヴァーチャルで登場し、女性CEOがパネルディスカッションといった具合で、あっという間の3時間でした。共催者のクリスチャン・ベイソン・デザイン・センターCEO、御招待ありがとうございました。

3  「戦略的パートナーシップ」のアップデート

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000029491.pdf

 8月末から今月にかけて、トーマス・ロアダム最高裁判所長官、ラース・ローゼ中銀総裁、ダン・ヨーアンセン気候・エネルギー・供給相、モーンス・イェンセン食料・漁業・機会平等相、ピーター・ホンメルゴー雇用相、トーキルド・フォゼ国家警察長官に着任挨拶を行い、また、デンマークFood Nation及び商工会議所主催のセミナーや、当館主催のデンマーク青年会議所とのセミナーや元国費留学生との集いにて日本とデンマークの関係について発表、意見交換するなど、貴重な機会を頂きました。
  一連の意見交換の中で、2014年の両国首脳文書「戦略的パートナーシップ」を一歩進めて、グリーンで持続可能な協力、デジタル化に将来の両国協力チャンスありといった御意見と同時に、デンマーク企業、文化・教育・報道機関はじめ多くの方々から異口同音に、デンマークは日本からの来訪者に国境を再開したので、早期に日本の国境も再開して欲しいとの御希望もお聞きしました。
(コフォズ外相と茂木外務大臣)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008684.html
 
  デンマークも日本も、感染状況をふまえつつ、段階的に社会経済活動を再開して行くとの共通のアプローチをとっています。日本は、アジア諸国との国境再開協議を開始しており、今後、適切な時期にデンマークとの協議が開始されるよう、当館は、今後もデンマークでの新型コロナウイルス感染症状況を東京にきめ細かく報告して行きます。そして、8月18日に茂木敏充外務大臣とイェッペ・コフォズ外相が電話会談で認識を一致されたとおり、日デンマーク間の戦略的パートナーシップに基づき協力関係を深化させていけるよう一歩一歩努力して行きたいと思います。

4  終わりに

  余談ながら、最近、ある方から勧められ、第2次世界大戦前後に米国に駐在したヘンリック・カウフマン大使の活躍を描いた最新映画Our Man in Americaを観ました。同大使が主導したグリーンランドへの米国のアクセス付与等に関するデンマーク外交が描かれており、楽しみながら学べるといった印象でした。
  着席するまでマスク着用は、レストランと同じ。ウィズ・コロナと再開する社会。文化、スポーツ、食欲の秋。新しい季節が始まりました。どうぞ読者のみなさまにおかれましても、御自愛の程お祈り申上げます。

 
在デンマーク日本大使館
宮川 学