日本とデンマーク - 再び地方交流

令和2年10月30日

   秋も深まって参りました。今月は、愛知県安城市の姉妹都市、ならびに千葉県成田市の友好都市への訪問と、日本とデンマークの戦略的パートナーシップの最新の進展状況について報告します。


1 コリング市と安城市の姉妹都市交流

   10月8日、デンマーク中部にある750年の歴史を有するコリング市を訪問しました。新型コロナウイルス感染症の影響で、市議会もビデオ会議で予算審議を行う中、ペダセン市長にご挨拶する機会を頂き、姉妹都市安城市との交流をはじめ、両国の長年の友好関係の延長線上にいる有り難さを痛感しました。


     
                   (2009年 神谷市長とコリング市長)   (2017年 神谷市長とペダセン市長)
               (写真:安城市HP)

   来訪記念の記帳を行った時に、市長から、「Koldingは、昔はColdingと綴ったこともあり、冷たい水との意味があった」と聞きました。コリング市は、1997年に、愛知県安城市と友好都市提携を結び、2009年には姉妹都市提携に調印し、交流を深めてきました。UNESCOの創造的都市ネットワークに参加し、市政にデザインの力を積極的に取り入れて、コリングで学び、滞在し、定住するとのコンセプトで、持続可能な町づくりを進めています。例えば、市内にある国立南デンマーク大学の学生が、産業排水を再利用した学校、住居、バス停などの暖房網を提案し、それが見事に採用され、環境に優しい町づくりに役立てられるそうです。市内の運河や港周辺エリアを再開発して、更に文化的で住みやすい町にするプロジェクトも進行中で、両市の益々の交流発展が楽しみです。
 

       
                                        (安城市デンパーク)(写真提供安城市)    (コリング市港湾再開発)(写真提供コリング市)

   帰途、2005年に、安城市歴史博物館での特別展「北欧デンマークの輝き」に協力頂き、また同年「日本展」を開催したコリングフース博物館、そして近代美術・デザインの展示を行うトラプホルト博物館を駆け足で拝見し、日本との縁の深さを体感しました。    コリング市訪問後、神谷学安城市長に、御礼と共に、見聞したことを書面で報告いたしました。神谷市長とペダセン市長との再会が実現する日が早く到来するよう祈っております。
 
                   
          (コリング市庁舎)                                 (筆者とペダセン市長)
写真:日本大使館)

2 ネストベズ市と成田市の友好都市交流

   10月20日、デンマーク南部のネストベズ市を訪問し、カーステン・ラスムセン市長に挨拶し、2003年から友好都市提携を結んでいる成田市との今後の協力について、市長はじめ市役所関係者の御意見を伺いました。
 
                                       
   (2003年訪日したネストベズ市長、写真提供成田市) (2020年 筆者とネストベズ市長 写真日本大使館)

   その後、市長の案内にて、デンマーク人なら誰でも手にとって使ったことがあると言われるガラス食器メーカー「ホルメゴー」博物館及び日本人アーティストと交流のある版画制作アトリエの制作現場を拝見しました。博物館には、フェースシールドやマスクを着用した地元の高齢の市民の方々が、大型バスで来訪しておられ、「こういう大変な時だからこそ、文化施設を見て頂くことが大切」との市長の言葉が心に深く残りました。
   今後のネストベズ市と成田市との交流のお役に立てるよう、新型コロナウイルス感染症の収束を待って、交流の本格的な再開が実現するよう、日本大使館も微力ながら全力でお手伝いして行ければ幸いです。

3 ヘレロップ高校と台東区の交流

   コペンハーゲン郊外のヘレロップは、日本大使公邸を含め各国大使館、公邸も多い地区です。10月19日、同校を訪問し、エデルスコフ校長に挨拶し、ここ数年の同校生徒の台東区訪問、今後の更なる交流について意見交換しました。ちなみに、台東区は、ヘレロップの隣にあるグラドサクセ市と姉妹都市関係にあります。

 
 (同校において、筆者とエデルスコフ校長)(同高校HP/FB)
   4日間の秋休暇明けの高校は、多くの高校生の熱気に溢れていました。世界史の授業に飛び入り参加して、短時間ながら、自己紹介と日本のことを少し話す機会を頂きました。次は、更にじっくりとお話しできることを楽しみにしています。

4 「戦略的パートナーシップ」のアップデート
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000029491.pdf

   10月は、レア・ヴァーメリン環境相、ベニー・エンゲルブレクト運輸相に着任挨拶を行い、また、外務省複数幹部、リズベット・シルマー=ヨーンス供給安全保障庁長官代行、ニールス・ニューゴー国内オリンピック・パラリンピック委員会会長、ボー・イェンセン・バドミントン協会会長、アン・ステファンセン・デンマーク海運協会事務局長、ゲルト・ヨアンセン・ソロー市長等と対面で再会し意見交換するなど、貴重な機会を頂きました。
   一連の意見交換の中で、2014年の両国首脳文書「戦略的パートナーシップ」を一歩進めて、グリーンで持続可能な協力、海運・運輸(含む自転車)分野での気候変動対策、デジタル化に将来の両国協力チャンスありといった意見を聞きました。そして、来年の東京オリンピック、パラリンピック大会が安全な形で無事開催されるよう応援するとの温かい声援を送って頂いたのみならず、バドミントン国際大会デンマーク・オープンでは、新型コロナウイルス感染症対策を徹底した大会運営について、1つの素晴らしい模範が提示されました。ありがたいことに、デンマークの日本に対する関心はとても高く、また、お互いに双方の良いところを学び合える機会に溢れていると思います。

 

5 終わりに

   10月後半、デンマークでは、夏の間はかなりおさまっていた新型コロナウイルス感染者が再度増加する日が続き、集会上限人数が50人から10人に引き下げられ、マスク着用義務がスーパーマーケット等の公共の場に広げられる等の規制強化が発表されました。3月のロックダウンに比べれば、社会は再開されていますが、4月以降、段階的に規制が緩和されてきた流れの中で、9月、10月と再度、部分的ながら規制が強まっており、ともすれば気持ちが沈んだり、文句の1つも言いたくなっても不思議でないところです。それでも、デンマークの人々は、きちんと前を見て日々を過ごそうとしているように感じるのは、私だけではないかもしれません。
   読者のみなさまにおかれましても、どうぞ御自愛の程、お祈り申上げます。
 
在デンマーク日本大使館
宮川 学